【コラム】完全平等主義 〜実践編

完全平等主義の実践について話す前に、「平等」という言葉に対するありがちな誤解について、もう一度説明しておきたいと思います。 平等とは、全員に一律の負荷を与えることを意味しません。むしろ負荷の分量を「不平等に調整」するところに、本当の意味にお…

かいづかむら

ひがしのうみのとなりに「かいづかむら」というむらがありました。 そのはまべではおいしいかいがたくさんとれます。そしてむらのひとびとは、かいをたべてははまべにかいのからをやまのようにつみあげるのです。 あるとき、かいづかむらにやってきたたびび…

犬のせなかに森ができた

犬のせなかに森ができた。 「病気なんじゃないの」とお母さんは言った。 「だれかのいたずらだろう」とお父さんは言った。 「森のたねが飛んできたんだ」とぼくは言った。 そのとき犬が「ワン!」と言ったから、犯人は森のたねだということになった。ぼくの…

いばりムシ

ムシのもりにすむいばりムシは、いばるのがだいすき。 いばりムシは、あなほりムシにいばります。 「おい。きみのほったあな、なかなかいいな。おれがすんでやるよ」 「このあなは、ぼくがじぶんのためにほった。きみはきみのあなをほれ」 「なんだと。おれ…

【コラム】完全平等主義

1. 人には生まれながらにして優劣がある。 2. 人の優劣は自然によって作られたものである。 3. 優劣に基づく上下の構造を作ろうとするのは、人の自然な本性である。 どうです? とてもシンプルな考え方ではありませんか。 差別主義が人の心に立ち上がるのは…

みかんのくにとりんごのくに

みかんのくにのみかんのなかには、りんごのくにがきらいなみかんがいました。 どうしてきらいなの? だって、あかいからね。あかいなんてへんてこだ。 りんごのくにのりんごのなかには、みかんのくにがきらいなりんごがいました。 どうしてきらいなの? だっ…

【コラム】国とは、みんなにお金を配るための仕組み 〜デジタル・ベーシック・インカムという考え

ベーシック・インカムを実現するには、従来の税制や再分配の仕組みをすべて刷新する必要があります。そうすると、これまでのやり方で利益を独占してきた「えらい」人たちの都合が悪くなることがたくさん起こるでしょう。しかし、どうして「えらい」人の現状…

いじわると猫パンチ

「どんなラクダにも生える羽根がある」と、たつみは言う。自由について話したかったのだ。「じゃあもう、こぶにストローさして、ココナッツミルク飲めなくなるね」と、かすみは答える。 それで、たつみの自由の話はどこかへ飛んでいってしまう。 殺し屋Tはま…

僕と猫

それは、僕が小学校低学年のころの、冬の出来事である。僕はひとつ下の弟を連れて、同学年の友達二、三人とだだっ広い空き地で遊んでいた。国際空港などなかった頃の愛知県の片田舎である。ところどころの水たまりには氷が張り、枯れ草の上を残雪がまだらに…

【コラム】属性がなくてもあなたは「いる」

あなたには、あなたが望む・望まないにかかわらず「属性」というものがあります。属性とは、どのグループに当てはまるか、ということです。あなたは男性かもしれないし、女性かもしれない。大人かもしれないし、子供かもしれない。日本人であるかもしれない…

【コラム】「なぐる愛」はあるのか

親が子をなぐる。兄が弟をなぐる。夫が妻をなぐる。先生が生徒をなぐる。監督が選手をなぐる。上司が部下をなぐる。と、この国には、実に多くの「なぐる」があります。これらは「体罰」と言って、なぐるほうは「愛」ゆえにそうするのだそうです。なぐる愛は…

【コラム】戦争は永久機関か

あなたは、お父さんの遺伝子を50%、お母さんの遺伝子を50%持っています。さらに言えば、父方のおじいちゃんの遺伝子を25%、父方のおばあちゃんの遺伝子を25%、母方のおじいちゃんの遺伝子を25%、母方のおばあちゃんの遺伝子を25%持っています。ひいおじ…

【コラム】あなたとは、あなたのことです

あなたとは、あなたのことです。 当たり前ですか? しかし、あなたとはあなたのことではない、と考える人がいるのです。あなたとは、誰かのものだ、と考える人が。 その誰かとは、人ではなく抽象的な存在、たとえば「国」だったりするのです。国を人のように…

墜落の時

爆発音と共に、不意に機体が大きく揺れた。 一人の男がとりすました顔つきで小さなケースを開け、拳銃を取り出した。そして、何が起こったのかを知ってる、唯一の人間らしく、躊躇なく自らの側頭に向けて引き金を引いた。 爆発音と発砲音、そして窓に飛び散…

弟と自転車

その自転車は、弟が八歳のときに誕生日プレゼントで贈られたものだった。一年と少し、弟はその自転車を大切に乗った。ある日、いつものように弟が自転車に乗ろうとすると、チェーンが外れていた。 昨日乗ったときには何ともなかった。しかし、降りると同時に…

静かな夜

きっとひどい顔になっているだろうと女は思った。 それでも、街で横を過ぎる人たちのほとんどは、彼女に注意を払わなかった。一人だけ、中年の男が、事情を察して哀れむような、それでいて関わり合いにはなるまいとするような表情を見せて、素早く目をそらし…

段ボールの家

雨の音じゃないぞ、とホームレスの男は目を覚ました。 彼の家は、段ボールで作ってある。段ボールは軽く、丈夫だが、雨ざらしにできるわけではない。家を置くのに、雨がかかるような場所を選んではいない。 ちくしょう、酔っぱらいが屋根に小便をかけてやが…

ピンポンダッシュ

久しぶりに聞いた玄関のチャイムの音で、六蔵は寝床から重い体を起こした。 体が重いのと体重が重いのは違うものだ、と六蔵は思った。体重が重くても体が軽いのもいる。相撲取りだ。しかし俺はといえば、体重が重くてさらに体も重い。 六蔵は病気だった。体…

あまりにも長いあいだ指を握りしめていたので、僕はつかの間、指のことを忘れていた。指はもぞもぞ動いて、僕を起こした。おはよう、おはよう。僕に指の声が聞こえるのは、かつての指の声を記憶しているせいにちがいない。指に口はついていない。 彼女は、い…

ヒネクロ

ヒネクロがやって来ると、カモメは河原の丸石にまぎれます。 「ヒネクロだ。あいつはおしりをつついてくる」 コサギは空に舞い上がって雲に隠れます。 「ヒネクロだ。あいつはドングリを落としてくる」 トンビは流木のわきで枝になったふりをします。 「ヒネ…

口裂け女の夜

塾からの帰り、人気のない夜道を歩きながら、少年は口裂け女のことを考えていた。その女はマスクをしていて「私、きれい?」と訊く。きれいだと答えると「これでも?」と言ってマスクを取る。すると、その口が耳まで裂けている。 少年にとって、これは怪談で…

バッテンのあな

バッテンは、じぶんのかたちにぴったりのあなをさがしています。みんなぴったりのあなにしあわせにおさまっている。ちょっとかたちのちがうひともいるけれど、なんとかおさまっている。でもバッテンにはみつかりません。 「どこにあるの?」 「しらないよ」 …

ローセムと森

森から青い空気が流れてきた。その青い空気を、ローセムの苦しい胸はいっぱいに吸いこんだ。体が清らかになって、透明になって、消えてしまうような気がした。それから、ゆっくりと息を吐いた。ローセムの吐く息は黄色かった。森はその黄色をたちまち吸い取…

怪獣ガオウ

ガオウ山は土にうずもれている怪獣である、と言いはじめたのはきつつき博士である。 「ガオウというのは我らの王と書いてガオウというのであり、怪獣のおたけびのことではありません」と、村長はテレビでまじめくさって反論した。 「王というわりには、高さ…

あかいボール

カモのすから、たまごがひとつぬすまれました。 ヘビが、ぬすんだたまごをたべようとしたところ、コツンとおとがしました。 おや? ヘビがみていると、たまごからかわいいくちばしがでたのです。しめしめ、きょうはごちそうだ、とヘビがなかからヒナがでてく…

こびと国の赤い帽子

こびと役場が「赤い帽子の窓口」というのをつくりました。 その窓口でなにをするかといえば、こびと夫婦の愛を計るというのです。愛をどうやって計るのかというと、愛を計るてんびんで計るといいます。こびとの夫婦が手をつないで一方の皿に乗り、他方の皿に…

怪獣ポンケンゴン

その犬がポンという名前だと人びとが知ったのは、首輪にそう書いてあったからです。首輪こそしていましたが、ポンは飼っていた人に知らない町で捨てられたのでした。ポンはおなかがすいていたので、町のあちこちで食べ物をさがしたけれど見つかりませんでし…

ムリムリちゃん

「サッカーせんしゅになって、ハット・トリックをきめるんだ」とタロウがいった。 「ムリムリ」とムリムリちゃんはいった。 「スケートせんしゅになって、トリプル・アクセルをきめるの」とハナコがいった。 「ムリムリ」とムリムリちゃんはいった。 「じゃ…

せんそうにかんするあるじゅぎょう

イライラむらには、イライラしているひとばかりすんでいます。イライラしているので、まわりのむらにでむいてはらんぼうをします。そうでもしないと、じぶんたちどうしでけんかばかりしてむらがほろびてしまうからです。 いっぽう、ニコニコむらには、ニコニ…

風変わりな遺書

以下が「彼」の自殺の現場に残されていた文面である。これを警視庁は遺書と認めず長く倉庫に保管していたが、内部流出により全文が明らかになった。弊誌はこれを遺書とみなし、故人の考えを公開することによって安楽死の是非について世間の洞察を得るべく、…