祖先の争いを子孫が引き継ぐことの虚しさを数字で表す、そして箸文化圏構想


あなたがクローン人間でなければ、あなたは父の遺伝子を50%、母の遺伝子を50%持っている。さらに言えばあなたは、父方祖父の遺伝子を25%、父方祖母の遺伝子を25%、母方祖父の遺伝子を25%、母方祖母の遺伝子を25%持っている。さらに言えばあなたは、父方祖父方曽祖父の遺伝子を12.5%、父方祖父方曽祖母の遺伝子を12.5%、父方祖母方曽祖父の遺伝子を12.5%、父方祖母方曽祖母の遺伝子を12.5%、母方祖父方曽祖父の遺伝子を12.5%、母方祖父方曽祖母の遺伝子を12.5%、母方祖母方曽祖父の遺伝子を12.5%、母方祖母方曽祖母の遺伝子を12.5%持っている。

ひいお爺さんの1人とあなたに共通の遺伝子は12.5%しかない。逆に言えば、そのひいお爺さんとあなたは、87.5%もの異なる遺伝子を持っている。ひいお爺さんは、87.5%他人なのである。

もう1代遡れば6.25%、さらにもう1代遡れば3.125%と、ある1人の祖先との共通遺伝子は、加速的にゼロに近くなる。遺伝子を物差しにすれば、ほんの5~6代遡っただけで、祖先は実質的に他人だらけとなる。血統主義者であれば、少量にも意義があるとホメオパシーのような理屈を持ち出すかもしれない。しかし僕はむしろ、彼らに都合の悪い血が少量混ざっている可能性の方が高いと指摘しておこう。過去の他国人と祖先の争いを子孫が引き継ぐことの虚しさは、このように数字で表すことができる。血筋や血統という言葉には、不変の何かが受け継がれるような響きがあるが、それは幻想なのである。

先日読んだミチオ・カク氏の著作に、太古中国の皇帝が不老不死の妙薬を求めて、世界中に使者を送ったという記述があった。皇帝は、妙薬を見つけるまで帰国は許さぬ、と命じていたので、東方の島に赴いた使者たちはついに祖国をあきらめ、日本を建国したのだという。

この説が正しければ、日本人の祖先は中国皇帝の使者である。使者に抜擢されたくらいだから、優秀な人材だったに違いない。僕は、つい誇らしくなる。しかし正味、その優秀な遺伝子の何パーセントが、僕に伝わっているだろうか。前述の算数を持ち出すまでもない。ゼロ、と見なすのが適当だろう。清涼飲料水でいうところの無果汁。香料分すら伝わっていないはずである。あやうく、MAKE JAPAN GREAT AGAIN、とか書いてあるキャップをかぶるところだった。日本人というだけで人に褒めてもらおうだなんて、確率に笑われる。

ところで、周辺国に友達がいないと、西欧に揶揄される日本の現状を憂い、ひとつ提案を思いついた。「箸文化圏」という仲良しグループを作ったらどうか。我々は、箸でつながっている。箸による、架け橋。2つに割れている、のではない。2つで協働するのだ。食欲を刺激して、おいしく平和を味わいたいものである。


※ 図書館の蔵書で返却したので確認できないが『フューチャー・オブ・マインド』か『2100年の科学ライフ』のいずれか。