1秒と2秒のあいだ、あるいはホモとヘテロのあいだにある、永遠という名の薄い壁


小学生の頃、小数点の存在を知った時、変な気持ちになった。1秒と2秒の間には、1.5秒があり、1秒と1.5秒の間には、1.25秒があり、というふうに、どんどん小数点が増えていく。それはもう、永遠に増えていく。

変な気持ちのまま、大人になった。そして、あれ?と思った。1秒と2秒の間に、永遠に小数点が存在するのなら、1秒はいつまで経っても2秒になれないのでは? なにしろ、永遠である。1秒と2秒の間には、乗り越えられないはずの永遠という厚い壁がある。時計の針をじっと見る。

コチ。

永遠はあえなく過ぎ去り、1秒は2秒へとなる。

アインシュタインによれば、光速近くで飛ぶスペースシップ内の「コチ」は、自転する地球のスターバックス内の「コチ」よりも長くかかる。乗っているものが、光速に近づくほど、時間は永遠に近づくのだ。時間は古来からの謎で、トーマス・マンも『魔の山』で時間についてたびたび語るが、かの文豪も、語るほどに時間に逃げられたように思う。脱稿までに12年もかかったのはそのせいだろうか。時間を線引きしたり、定義することは、このように簡単ではない。

同じことが、人の性にも言える。

男性と女性の多様な性差「LGBT」がしばしば話題になっている。僕は以前から、すべてのヘテロセクシャルは、ホモセクシャルを併せ持っているとにらんでいた。その根拠は、ホモ嫌いなヘテロ男性も、一部の同性を「かっこいい」と言うし、同様にヘテロ女性も、一部の同性を「かわいい」と言うからである。同性をかっこいいと言うときの男性は、いくぶんかゲイ的である。同性をかわいいと言うときの女性は、いくぶんかレズビアン的である。

僕はそのように人を観察してきた。LGBTを激しく嫌悪する自称ヘテロセクシャルたちは、一般的性差の人よりもホモセクシャル寄りなのではないか、と僕は推察する。性差の間際にいることの自覚が、彼らに危機感を持たせる。そこにはごく薄い壁があるだけで、あちら側の声が耳元に聞こえてくるのだ。

コチ。

それはある日、彼らの性が変わる音。安泰だったはずの永遠が落下した音。自らしてきた差別が、自らの首を締めた音。しかし、心配はいらない。時代は、あなたを守る方向へ動いている。地球時間だから、スペースシップ内よりも速い時間で。