王と家臣と自殺する民

 「陛下。自殺をする民が増えています」
「それがどうした。死にたいやつは死ねばいい」
「ところが、それでは国は困ります」
「なぜだ」
「奴隷がいなくては国は成り立ちません」
「そうか。ならば自殺を禁じよう」
「法は歯止めにならないでしょう。自殺志願者は法を恐れません」
「待て。もし奴隷がいなくなったら、私の食事はだれが作るのか。だれが私の宮殿を建てるのだ。だれが私の盾になって命を捨てるのだ」
「民を自殺させないために必要なのは、神です」
「神! 神なんぞは私の知ったことじゃない」
「神を利用するのです。神が自殺を禁じていると吹き込むのです」
「やつらは私の言うことは聞かずに、神の言うことは聞くのか。目に見える私ではなく、目に見えぬ神を」
「しかしこの国では事実上、神とはあなたのことです」
「おまえは神を信じないのか」
「あなたを神だと信じます」
「よろしい。ならば、神の言葉を言おう。……自殺者は神に裁かれる。神は自殺者を決して許さない。すべての民は神の所有物である。神はこの国を創造した。国のために尽力せよ。生きて、労働するのだ」
「素晴らしいと思います」
「私に栄光あれ。アーメン」

©新貝直人