どこかのほしのはらっぱに、なんのやくにもたたないいきものがいました。
「きみはほんとうに、なんのやくにもたたないねえ」
なにかのやくにたついきものたちは、くちぐちにそういいました。
なんのやくにもたたないいきものは、うんうんうなずいて、「じっさい、そうだねえ」といいました。
なにかのやくにたついきものたちのなかから、「なんのやくにもたたないなら、きのみをたべてはいけないなあ」というこえがあがりました。
なんのやくにもたたないいきものは、おなかをぐうとならしながら、「それなら、ぼくはすきっぱらでいるよ」といいました。
なんのやくにもたたないいきものが、おなかをすかせてなみだをながしていると、きのみがころころころがってきて、めのまえでとまりました。
なんのやくにもたたないいきものは、「ありがとう、ありがとう」といって、こっそりほらあなにもちかえってむしゃむしゃたべました。
するとほらあなのそとから、「なんのやくにもたたないなら、ほらあなでねてはいけないなあ」というこえがしました。
なんのやくにもたたないいきものは、ねむいめをごしごしこすりながら、「それなら、ぼくははらっぱでねるよ」といいました。
なんのやくにもたたないいきものが、つめたいよかぜのふくはらっぱでなみだをながしがらねていると、おちばがかぜにふかれてやってきて、からだをあたたかくつつみました。
なんのやくにもたたないいきものは、「ありがとう、ありがとう」といって、むにゃむにゃねむりました。
それらはみんなゆめでした。
なんのやくにもたたないいきものは、きのみもたべれなければ、おちばにつつまれもせず、ひとり、はらっぱでこごえていたのでした。
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