霊能者

 霊能者様の背後に、ひと粒の兎の糞が浮かんでいて、じっとかの人の背を見つめているのだ。

 あれはひょっとして、霊能者様の背後霊かしらん。いや、そんなはずはあるまいと、神妙にお言葉に耳を傾けていると、糞がけたけた笑った。

 先生、どうも私にも霊が見えるようです。おまけに声まで聞こえました。たまらずそう言うと、霊能者様はやさしく微笑んで、では、私の背後に聖徳太子が見えるでしょう、と仰った。私は恐縮して、はい、聖徳太子様は兎を飼っておいでのようです、と申し上げた。

 霊能者様はたいそう満足なさって、この霊験で清められたあなたの心が、あなたに特別な世界を垣間見せたのです、と仰った。そうして私から霊視料の一万円を受け取ると、兎の糞と共に悠々とお帰りになられたのでした。

©新貝直人