こびと国の赤い帽子

 こびと役場が「赤い帽子の窓口」というのをつくりました。
 
 その窓口でなにをするかといえば、こびと夫婦の愛を計るというのです。愛をどうやって計るのかというと、愛を計るてんびんで計るといいます。こびとの夫婦が手をつないで一方の皿に乗り、他方の皿に愛のおもしを載せて計る。愛のおもしが重いほど、その夫婦の愛は強い、ということになります。そしてその年、こびと国で一番のつよい愛をもっていた夫婦には、ペアの「赤い帽子」をプレゼントするのです。

 赤い帽子は、特別な帽子です。それは別名、ただの帽子と呼ばれています。それをかぶっていれば、食べ物を買うのもただ、電車やバスに乗るのもただ。住む家の賃料もただ。電気や水道などの生活に必要なものから、とくにそうでないものまで、みんなただになるのです。

 その年、国で一番になった夫婦は、赤い帽子をかぶってさっそく旅行に出かけました。夫婦には行ってみたい町があったのです。それは遠い場所にある、とても貧しくて、小さな町です。こびと夫婦は、そこで貧しいこびと夫婦に出会いました。お金にこまっているばかりではなく、こどもを亡くしてしまって毎日泣き暮らしているのです。赤い帽子のこびと夫婦は、帰りぎわにその家に赤い帽子を置いてそっと立ち去りました。

 貧しいこびと夫婦はとても喜びました。さっそく帽子をかぶると、ずっと憧れだった裕福で大きな町へ旅へ出かけました。活気のある市場や、おいしい食べ物屋さんを歩いてまわり、山よりも高いこびとの塔にも登りました。貧しいこびと夫婦は、そこで裕福なこびと夫婦に出会いました。彼らはお金にはこまっていないけれど、夫婦仲がわるくていつも喧嘩ばかりしています。貧しいこびと夫婦は、帰りぎわにその家に赤い帽子を置いてそっと立ち去りました。

 裕福なこびと夫婦は、何だこんなものいらないぞ、と最初は言いました。けれど、赤い帽子を見ていると、すっかり忘れていた、若く貧しかったころが思い出されてくるのです。当時の、お金がなく、お金がないことで愛がすり減っていき、それならとがむしゃらにお金を追い求めた日々が。裕福なこびと夫婦は、この帽子を持ってどこか自分たちの知らない町へ行ってみようかと相談しました。自分たちよりも、もっとこの帽子が必要な夫婦がいるだろうから、と。

 こうして赤い帽子は、こびと国を旅し続けるのでした。

©新貝直人