戦争は永久機関か

あなたは、お父さんの遺伝子を50%、お母さんの遺伝子を50%持っています。さらに言えば、父方のおじいちゃんの遺伝子を25%、父方のおばあちゃんの遺伝子を25%、母方のおじいちゃんの遺伝子を25%、母方のおばあちゃんの遺伝子を25%持っています。ひいおじいちゃんともなれば、あなたと共通する遺伝子は12.5%しかありません。逆に言えば、ひいおじいちゃんは遺伝的に87.5%も他人なのです。あなたが2000年生まれとします。そのとき、あなたのお父さんのお父さんのそのまたお父さん…と父方をずっとさかのぼっていけば、おそらく明治時代を越えた辺りで、父方のご先祖さまとあなたはもう99%以上、遺伝的に他人です。血筋、というのはこんなにも「伝わりにくく」できているのです。

人類というのは、長くこの事実を知らなかったので、祖先の歴史を掘り返しては自分のことのように怒って戦争をしてきたし、いまもしている国があるのです。これはとても愚かなことです。これでは、戦争は永久機関のようになってしまいます。実際の永久機関のように実現が不可能ならいいのですが、戦争はいくらでも実現できるわけです。じぶんの悪意を正当化するために、悪意のあるリーダーを選ぶこと。それだけで、戦争の下準備は完了したようなものです。

戦争を避けるにはどうしたらいいのか。それこそ永遠に葬り去るには、どうしたら? 僕はこんなふうに考えています。遺伝子レベルが12.5%以下になった祖先の怨恨については不問にし、国の対立に利用しない、というような国際条約ができればいい、と。どこで歴史にきりをつけるか、という根拠を遺伝子レベルに求めるわけです。あなたが祖先のしたことに影響を受けるのは、おじいちゃんレベルまで。ひいおじいちゃんがどんなに悪行をしたとしても、遺伝子レベルは12.5%。まして、人の行いは遺伝子のみで決まるわけではありません。むしろ、環境の影響のほうがはるかに強いのです。こうして国の過去の全体責任から、現在の国を解放していけばいい。逆に、現在の国は、未来に対して「孫の代までの責任」がある。一代限りの悪事ではすまされないぞ、というわけです。

それと同時に、私たちは歴史についてやはり学ばなければいけない。そのときに、過去に共鳴しないことが重要になるのです。遺伝子レベルの感覚をもつことが、それを助けます。過去を現在の価値観でまぶしく照らしてみて、自国であっても他国であっても、批判的に見るのがいい。そうでなければ、いつまでたっても古びた価値観が亡霊のようによみがえるでしょう。歴史は立派である必要はありません。人間のしてきたことですから、当然失敗だらけなのです。失敗を隠してしまうと、人という種はいつまでも同じ場所でつまづくことになります。

ところで、日本は「周辺国に友達がいない」と、諸外国に冷笑されているそうです。そこで、ひとつ提案を思いつきました。「箸文化圏」という仲良しグループをアジアに作ったらどうでしょうか。これは、経済や政治などの関与のない、民間による文化の「つながり」です。私たちは、箸でつながっている。箸による架け橋、というわけです。2つに割れている、のではなく、2つで協働するのです。アジアの料理はどこも素晴らしい。みんなで食欲を刺激し合って、おいしく平和を味わいたいものです。