かいづかむら

 ひがしのうみのとなりに「かいづかむら」というむらがありました。

 そのはまべではおいしいかいがたくさんとれます。そしてむらのひとびとは、かいをたべてははまべにかいのからをやまのようにつみあげるのです。

 あるとき、かいづかむらにやってきたたびびとが、はまべでとれるかいのおいしさにひかれてむらにすみつくようになりました。おとこはむらびとにいいました。

「おれはいろいろぜんこくをたびしてまわったが、こんなにうまいかいはほかのどこにもないし、こんなふうにかいのからをたかくつみあげているむらもない。まったくこのむらはとくべつなむらだ。きっと、このつみあげたかいづかが、うまいかいがそだつのをまもっているのだ。ところが、となりのむらにはこういったものがない。だから、となりむらはまずしく、すんでいるひともすくないのだ。となりむらにひつようなのはかいづかだ。だから、となりむらのひとびとにもかいづかをつくるようにいってやろうじゃないか」

 むらびとたちはまったくそのとおりだとおもいました。そしておとこをせんとうにとなりのむらをたずねたのです。

 しかし、となりむらはかいづかのはなしにあまりきょうみをもちませんでした。というのも、となりむらはうみからすこしはなれたばしょにあり、うみのものよりもやまのものをたべてくらしていたからです。そこでおとこはいいました。

「かいづかをつくることで、やまのものももっととれるようになる。だからかいづかをつくれ。かいがないならうちのむらからはこぶ。そのぶんおまえたちはやまのものをよこすのだ」

 やがてひがたつにつれて、となりむらにもかいづかがだんだんふえていきました。おとこはとくいになり、みずからをかいづかのぬしとよぶようになりました。そしてかいづかむらはたいそうさかえました。しかしそのおとこもとしをとり、やがてやまいにたおれました。

「おれがしんだら、おれをはまべにうめて、そのうえにむらでいちばんおおきなかいづかをたてろ」

 おとこがそういいのこしてしぬと、むらびとたちはかつてないほどのおおきなかいづかをたてました。むらじゅうのかいづかをひとつにあつめたのです。

 そのとしに、うみがあかくなりました。そしてなぜだか、かいがさっぱりとれなくなったのです。むらびとたちはやまのものをもらいに、となりむらをたずねました。おとこのはかからとったかいをわたして、そうしてたべものをてにいれたのです。

 それからもながいことうみはあれて、たかいなみがおしよせ、おとこのはかのかいづかをきれいさっぱりながしてしまいました。むらびとたちはうなだれて、こうかんするものももたずにとなりむらをたずねました。すると、となりのむらびとはいいました。

「それなら、やまのものをわけるかわりに、ここらのかいづかのかいをひろってもちかえってくれないか。かいづかのぬしとやらのおしつけたかいだよ。あのかいづかのせいでわたしたちはまえよりもずっとまずしくなった。このむらにはあんなものいらなかったんだ」

 かいづかむらのひとたちはくろうして、となりむらのかいをひとつひとつかいしゅうしていきました。そしてそのかいをふたたびつみあげることはせず、いしでくだいてうみにながしました。

 かいづかのぬしのなまえがすっかりむらびとたちにわすれさられたころ、うみはいぜんのようにあおくなりました。そしてむらびとたちはうみのものをとり、かいのからではなくたべものどうしのこうかんを、となりむらとするようになったのです。

 

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